インビュー時間の広告効果への影響
IAB・MRCが定義するインビューの定義はバナー広告の場合「広告表示領域の50%以上が1秒以上表示された状態」ですが、欧米では1秒表示されたらカウントされるインビュー数よりも、インビュー時間を重視する傾向が目立つようになりました。本記事では「インビュー時間の広告効果への影響」について欧米各社が発表するデータをまとめました。(データ参照元は記事末尾に記載)
■英経済誌「ファイナンシャル・タイムズ(FT)」の事例
2015年5月、インビュー5秒以上表示された広告に課金するCPH(Cost Per Hour)広告メニューの販売を発表。
<結果>
インビュー5秒以上表示された広告は、5秒以下の広告よりも、ブランドリフト調査において重要な効果向上が見られた。
-
広告想起率 +79%
-
ブランド好意度 +71%
-
ブランド連想率 +51%
-
ブランド考慮率 +58%
また、CPH広告メニューはFTの広告収益の向上に貢献しているそうです。
・時間ベース方式(CPH)の広告を販売した結果、インプレッション広告(CPM)のみでの販売に比べ、220万ドル(約2.7億円)の売上増。
・2015年は時間ベース(CPH)の売上はディスプレイ広告全体の7%を占める。2016年は売上の30%を目標にする。
■英経済誌「エコノミスト」の事例
2015年11月、FTを追う形でCPH広告メニューの販売を開始。
<結果>
CPHで実施したあるクライアントの広告は、同時期、エコノミストでCPMで実施した競合4社の広告よりも高いブランド認知率の向上が見られた。
・ブランド認知率の伸びは10.6%。競合4社よりも高い。平均のブランド認知向上率の2.1%と比較すると5倍以上高い。
・5~30秒間アクティブに視聴された広告は、CPMで購入された同じ広告(0.14%)と比べて、CTR(クリックスルー率)も50%高かった(0.21%)。
■米デジタルエージェンシー・IPG MEDIA LAB他2社による調査
米IPG MEDIA LAB、CADREON、Integral Ad Scienceの3社が合同で、ビューアビリティと広告効果の関係について大規模な調査を実施。
<結果>
・【左の図】インビュー時間が長くなるほど広告想起率が向上する。
・【右の図】インビュー(1秒)は、インビュー基準値以下のインプレッションと比較して、注目度(黒)は向上しても、広告想起率(黄)は向上しない。
■米アドテクベンダー・33acrossの調査
2016年7月、ディスプレイ広告のインビュー時間とクリック率の関係性をデバイス別で調査。
<結果>
・モバイルとタブレットの総クリック数の50%は、インビュー7秒以降に発生。
・デスクトップの総クリック数の50%は、インビュー15秒以降に発生。
■蘭アドテクベンダー・Bannerconnectの調査
<結果>
インビュー時間とパフォーマンスに顕著な関連が見られた。
・【左の図】CTRはインビュー10秒間で30%上昇し、30秒の表示では200%上昇。
・【右の図】インビュー10秒間でCPAは70%減少
ここまでが、インビューと広告効果に関する各社の調査結果です。では、インビュー時間が長くなる広告の掲載位置はあるのでしょうか?実は、ファーストビュー(Above The Flod ※スクロールしなくてもブラウザに表示される位置)での掲載より、その下の「Below The Flod」での掲載の方が、インビュー時間が長くなるというデータもあります。
■米アドテクベンダー・Yieldmoの調査
モバイル広告におけるビューアビリティ、インビュー時間、ビューアブルCTRの関係性を調査。
<結果>
・ファーストビューより下のエリアの方が、インビュー時間が長い。
・ビューアビリティが低い程、CTRは増加する傾向。ビューアビリティ5%のページ最下部の広告のVCTRは、ビューアビリティ50%以上の広告と比較し、VCTRが3〜5倍となった。
■英経済誌「エコノミスト」の調査
ビューアビリティとインビュー時間の関係性を調査。
<結果>
高いビューアビリティが必ずしも高いアテンション(インビュー時間)を獲得する訳ではない事が判明。
「ビューアビリティ、言い換えれば広告掲出の確実性は、ページ上部へ。ユーザーの注意は、ページ下部にある」(エコノミストデジタルプロダクト営業部グローバル統括部長アシュウィン・スリダー氏)
■英アドテクベンダー・OnScrollの調査
ファーストビューとそれ以下のエリアで配信された広告の配信結果を比較。
<結果>
ファーストビュー以下のエリアに配信された広告の方が、ファースビューに配信された広告よりも、CTRが66%、インビュー時間が3.2倍と高くなった。
通常のCPM課金では、ビューアビリティの高いファーストビューでの掲載広告が高単価で販売されており、ビューアビリティの低い掲載位置の広告は低単価で販売されています。しかし、より広告効果に影響のあるインビュー時間を重視するのであれば、ビューアビリティが低くあってもインビュー時間が長くなる掲載位置の広告の価値を今よりも高く評価できる可能性があります。
また、各ページごとにインビュー時間が高くなるエリアが異なる傾向が強い場合、ページごとにインビューが最も高くなるエリアをリアルタイムに解析し、そのエリアへダイナミックに広告配信する技術へのニーズがでてくるかもしれません。
<PR>ロカリサーチの広告配信プラットフォームSCENEでは様々な広告フォーマットの配信だけでなく、In-View時間の計測が可能です。パブリッシャー様はDFPなどお使いのアドサーバーと連携されることで、In-View課金による純広告メニューの開発も可能になります。ご興味あるパブリッシャー様はぜひお問い合わせください。
<参照元>
■FTに関する情報
- Keeping Up With Time-Based Metrics: One Year of Cost Per Hour for Financial Times | admonster(2016/5/11)
- 「インプより時間だ」。日経が買収したFTのネット広告実験 | DIGIDAY JAPAN(2015/10/2)
- タイムベース広告販売のために結束するパブリッシャーたち:FTを筆頭に20数社が定期的に会合 | DIGIDAY JAPAN(2016/5/24)
■Economistに関する情報
- ユーザーの「アテンション(注目)」をネット広告の通貨に:英経済誌「エコノミスト」の試み | DIGIDAY JAPAN(2015/11/9)
- 脱インプレッションベースに舵を切る「エコノミスト」:アテンションベースなら認知率は約5倍 | DIGIDAY JAPAN(2016/2/2)
■IPG MEDIA LAB/ CADREON/Integral Ad Science
■Bannerconnect
- 表示時間: デジタル効果計測の新基準? | Exchangewire Japan(2016/2/18)
■33Across
■Yieldmo
■OnScroll
- Viewability, The $11Billion Problem(2014/2/26)